内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
それゆえ、交際三か月半と日が浅い中でプロポーズを考えたのだ。

「話し合いの機会も与えてもらえなかった。果歩を奪っていったやつは、俺が太刀打ちできないほどいい男なんだろう」

カップを置いて自嘲気味に笑えば、和樹に真顔を向けられた。

「卓也よりいい男はなかなかいないと思うぞ」

からかっている雰囲気のない真面目な調子で言われたため、面食らう。

「和樹はいつからそんな目で俺を見ていたんだ? 悪いが応えてやれない」

「気色悪い勘違いをするな。女からしたら、お前より好条件の交際相手はそうそういないだろうという話しだ」

「ああ、そういう意味か」

大企業の御曹司と結婚すればセレブな暮らしが約束される。

それを狙い、卓也に気に入られようと媚びを売る女性たちにはうんざりしてきた。

けれども今は〝好条件〟と言われても嫌悪感を覚えず、むしろかすかな希望の光を感じた。

「なぁ、もし俺が日星製薬での立場を打ち明けていたとしたら、果歩に逃げられなかったと思うか?」

「諦めろよ。たられば言っても意味がない。大体お前が社長の息子なのを隠していたのは、金目当てで寄ってくる女が嫌だったからだろ?」
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