内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
「そう、だな……」
痛いところを突かれて、茶色い水面に視線を落とす。
(俺自身を見てほしいから一般的な会社員のふりをして付き合い、フラれたら立場を明かして引き戻そうと考えるとは、愚かすぎて笑い話にもできない)
自分に呆れていると、アイスココアを飲み干した和樹が立ち上がってニッと口角を上げた。
「こういう時は飲んで忘れろ。帰りに焼き肉屋に行かないか? 寿司屋でもいい。新車を買ったから金欠で、最近いいもの食っていないんだ。奢って」
「おい、俺を財布扱いするな。今日は残業確定だ。否決された企画書を根本から考え直さないと。暇になったら飲みに行こう」
「いつになるやら」
おどけた調子で肩をすくめた和樹にククッと笑った卓也は、なんでも話せる友人が身近にいてくれることに感謝した。
時刻は十八時過ぎ。
第一事業部の広いフロアでは百人近い社員がデスクに向かっており、退勤時間になっても三分の二以上が残っている。
(できるだけ定時で帰るよう朝礼で話したが、連休前は難しいか。スケジュールと業務配分の見直しを、もっと早い時期に指示すればよかった)