内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
部長デスクから皆の様子を見て内省に沈んだが、そう思う卓也が最も忙しい。

昨今ではジェネリック薬を選択する患者が増えたため、これまで安定的に利益を上げてきた薬剤が思うように売れなくなった。

付加価値をつける案や価格改定、新たな販売先の確保など、他部署と連携しての課題が山積している。

それに加え、ニューヨーク事業部への異動の事前準備としての情報収集や勉強を同時進行させているため、睡眠時間を削るほどに忙しい。

今日も深夜までの残業を覚悟して仕事していると、内線電話が鳴った。

近くの席の社員が電話に出て、卓也に視線を向けた。

「部長、吉川社長からお電話です」

背筋を伸ばして受話器を取る。

いつも厳しい父から英才教育を施されて育った卓也は、今でも習慣的に身構えてしまう。

子供の頃も今も滅多なことでは褒められず、『お前に能力がないとわかれば他の者に社を任せる』とも言われていた。

日星製薬の創立は祖父の代だが、今の規模まで拡大させたのは父の功績で、卓也は父に尊敬と畏怖を感じている。

『用がある。今から来い』

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