内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
緊張しながらノックをして入室すると、叱責を覚悟していたというのに母親と若い女性の姿もあって面食らった。

(今日の会議についての話ではないのか?)

卓也の母は日星製薬の社員ではないが、政治家のパーティーや有力者との懇親会、種々の式典などは夫婦で出席するため、社内で見かけることがたまにある。

NPO法人の運営もしており、秘書をつけるほどに忙しい人だ。

六十近い年齢にしては若々しく、やや垂れ目の整った顔をして、今日は上品な薄紫色のタイトスカートのセットアップを着ていた。

父親は中背で頬骨の張った四角い顔と大きめの鼻を持ち、目つきが鋭い。

卓也の外見は誰が見ても母親似である。

両親は広い社長室の中央にある三人掛けの黒い革張りソファに、間を空けて座っていた。

テーブルを挟んだ向かいのソファに座る若い女性は、スッと立ち上がると卓也に向けて会釈する。

長い黒髪を結い上げ、刺繍の入った清楚なミドル丈ワンピースがスラリとした長身の彼女によく似合っている。

目鼻立ちのはっきりした美人顔で、家柄のいいお嬢様といった雰囲気を醸していた。

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