内緒の双子を見つけた御曹司は、純真ママを愛し尽くして離さない
どこかで会ったような気がして記憶を探ろうとしたら、その前に母が紹介を始めた。

「こちら、六王寺椿姫さん。覚えているでしょう?」

その名を聞いて思い出した。

厚生労働省の六王寺事務次官の娘で、たしか年齢は二十八歳。

昨年の冬、とある政治家のパーティーで一度会い、少し話した。

「椿姫さん、お久しぶりです。それで私が呼び出されたのは?」

「そこにお座りなさい。椿姫さんもどうぞ楽にしてください」

嫌な予感を覚えつつ卓也がひとり掛けのソファに腰かけると、母がオホホと笑う。

「椿姫さんの隣が空いているわよ?」

「いや、ここでいい」

「相変わらず奥手ね」

奥手だったのは少年時代までだが、母に交際している女性を紹介したことも話をしたこともないので、そう思われているのかもしれない。

(いや、印象操作か。俺が呼ばれた理由はたぶん……)

予想したことに顔をしかめたくなったがこらえた。

テーブルにはすでに四人分のコーヒーカップと有名洋菓子店の焼き菓子が置かれていて、父の秘書に用意させたのだと思われる。

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