秘密の出産だったはずなのに救命医の彼に見つけられてしまいました

待てない

気持ち悪い……。
夜勤に行かなければならないのに前日の日勤の後から体調が悪く起き上がれない。ずっと寝ていたのに疲れが取れず,だるさが続いているし、少し目眩もする。
私はなんとか体を起こすと水を口にしたが瞬間的に吐きそうになってしまう。
出勤時間は迫ってきており、この時間から他の人を探すのは難しい。
体を引きずるように出勤すると、なんとか夜勤をこなした。穏やかな夜勤で良かったとホッと肩を撫で下ろすが、仕事が終わるとまた症状が消えていなかったことに気がついた。
このまま夜勤明けで休みになるからゆっくり寝ようとロッカーで着替えていると久しぶりに未来に会った。

「夜勤明け? 私もなの。っていうか優里の顔色ものすごく悪いよ。どうしたの?」

私の顔を見て小走りに駆け寄ってきた。

「うん……昨日からだるくてさ。めまいも吐き気もあるみたい。なんとか夜勤はできたからもう帰って寝るわ」

やっと説明すると私はバッグを持ち手を振るが、未来はその手を取ると椅子に座らせた。

「待ってて。私も着替えてくるから一緒に帰ろう。優里の顔見たらひとりでなんて帰せないよ」

そう言い残すと彼女は小走りに自分のロッカーへ向かった。
程なくして戻ってくると私は腕を掬い上げられ、歩かされる。

「診察してもらう?」

勤務先で診察してもらうのは出来るが、時間がかかる。
待つのも辛く、早く横になりたかった。

「ううん。待つのも辛いから帰る」

「分かった」

そう言うと私の荷物を持ち一緒に歩き始めた。
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