再会した敏腕救命医に娘ごと愛し守られています
翌朝。
だるい身体を起こし、仕事に行く準備をした。体力勝負の仕事でもあるため朝ごはんを少しでも口にしたかったが受けつけない。仕方なく昨日買った炭酸を口にして出勤した。
仕事をしている間は気を張っているからか多少はいいが、それでも匂いに敏感になりいつもなら気にもならないことが気になる。というかその都度吐き気を催し、トイレに駆け込む。
私の様子を見ていた師長から声をかけられた。

「武藤さん、体調悪いの?」

「すみません。ちょっと体調を崩してしまっていて……」

斗真にも伝えてないのに師長に伝えるなんて出来ない。斗真の反応も気になる。

「今日は落ち着いてるし帰りなさい。明日も日勤よね? 体調次第でシフト変更するから夜にでも連絡しなさいね」

40代の彼女は見た目もだが、どっしりと構えたお母さん、といった雰囲気の人だ。師長という肩書きはあるが、とても気さくで相談しやすい人柄で人望があるのも頷ける。実際に3人の子供を育てている母でもある。彼女ならつわりを分かってくれるかもしれないと思うが口に出せない。

「すみません」

「いいのよ。体調崩すことだってみんなあるんだからお互い様でしょう。ほら、同じチームの人に申し送って」

私は日勤のメンバーに声をかけるとみんな快く引き受けてくれホッとして緊張の糸が解けたと同時にまた気持ちの悪さが戻ってきた。
ロッカーで着替えを済ませるとやっと家に帰ってきた。
何をしても気持ち悪い。けれど吐き気止めを飲める訳でもなく身の置き所がなくてゴロゴロするがそのうちに睡魔に襲われ眠ってしまった。
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