再会した敏腕救命医に娘ごと愛し守られています
泣くだけ泣いたあと、私は師長に連絡をした。
今のこの状態で働くなんて出来ない。

「武藤です。忙しい時間にすみません」

『いいのよ。体調はどう?』

優しい声に涙腺がまた緩む。

「早退してすみませんでした。あの、その……実は妊娠しているようで」

『やっぱり。そうじゃないかと思ってたのよ』

「え?」

『どれだけ妊婦さん見てきたと思ってるのよ』

笑いながら話す彼女の声色には優しさが溢れていた。

『どうする? 今日見た感じだと辛そうよね。少しお休みする?』

「もし可能であればお願いできませんか?」

『もちろんいいわ。女性の多い職場だからよくある話よ。気にすることないわ』

「まだ安定期ではないのでみんなには言わないで欲しいんです」

どこから斗真に漏れるかわからないので、念のため妊娠していることは伏せてもらうように頼むとそれも心得ているようですぐ了承してくれた。

『つわりってどのくらい続くかわからないからひとまず今月は休みにしましょうね』

次に出てくる日を決めないでいてくれて助かった。
いつまで、と言われるときっと負担に感じてしまったと思うが師長のおかげでゆっくり休めるんだと思うと肩の荷がおりた。

「ありがとうございます」

『赤ちゃんを第一に考えてあげていいのよ。その子はあなたしか守れないんだからね』

その言葉におさまりかけていた涙がまたこぼれ落ちる。

「……はい。ありがとうございます」

電話を切ると静まり返った部屋でまた布団にくるまった。
< 33 / 74 >

この作品をシェア

pagetop