秘密の出産だったはずなのに救命医の彼に見つけられてしまいました

斗真side

優里が子供を抱いて現れた時には驚いた。
あれから4年。
急にいなくなった彼女を探しても見つからず途方に暮れた。
仲の良かった未来や亜依に聞いてもわからないと言われてしまった。
連絡が欲しいと言われ、なかなかできなかっただけで消えられてしまったのが腑に落ちない。
もちろん連絡をおそろかにしてしまった俺が悪い。
でも彼女はそんなことくらいで怒る女ではない。
むしろ同業者として俺の理解者であったはず。
将来の話までしていたのに、なぜ今になって消えた?
俺にとっては些細なすれ違いだったはずなのに、と思っていた。
消えた優里を考えると胸の中にぽっかりと穴が空いた様になったが、今の姿は彼女の喜ぶものではないと奮起した。やっと希望の救急で働ける様になった。
たまたま頼まれてバイトに行った先で優里にあって本当に驚いた。
バイトもたまたまで1回だけだったが、その1回を神様に感謝した。
優里の子供は3歳。パッチリとした二重は彼女の目元にそっくりだ。
旧姓のまま、そして子供が3歳。
どうしても考えてしまうことがあった。
後からカルテを見直すと生年月日から考えても俺たちの子供であるのは明らかだった。
彼女は妊娠を伝えたくて何度も連絡が欲しいと言っていたのだと分かると愕然とした。
膝から崩れ落ちそうになった。
自分から彼女とこの子を手放してしまったのだと理解した。
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