再会した敏腕救命医に娘ごと愛し守られています
ショッピングモールまでの道中、紗良が歌を歌い、斗真も一緒になってノリノリだった。
「とーま、とーま」と紗良に言われるたびに「なに?」と楽しげに返していて、ふたりは会話が途切れない。
あっという間に到着すると彼は紗良をチャイルドシートから下ろしてくれ、手を繋いでいた。

「優里、荷物も持つよ」

「大丈夫。そんなに重くないから」

いつもなら紗良の手を繋いでるけど今日はそれがないだけでも楽なものだ。
斗真は紗良に付き合ってあちこちに連れまわされている。私は後ろからちらちらと見ながら後をついて行った。誰が見ても親子にしか見えないであろうふたりの姿を見ていて胸の奥がチクっとした。本当ならこんな姿も日常だったんだよね。

「ママー。おなかすいた」

振り返った紗良はいつもに増して笑顔だった。斗真も先ほどより顔色が良くなったみたい。

「はいはい。何にしようか」

いつもなら気楽にフードコートに寄っていた。斗真にそう伝えてると、頷いてくれた。
私たちがうどんにすると斗真も一緒のものを頼んでいた。
今の斗真ならフードコートで安いうどんを食べるなんてないんだろうなぁ。学生の頃はこうやってグループのみんなとも食べたり話たりしてたのに……。

「みんな元気かね」

ふと呟くと、私の考えがわかったのか斗真は食べながら

「元気だ。誠一郎も京介も……もちろん未来も。連絡とってるのか?」

「ごめん。未来と亜依とはとってる」

「そうか。未来は優里の味方か」

淋しそうに笑っている姿を見て申し訳なさを感じる。

「ごめんね。みんなに斗真には言わないでってお願いしていたの。だからふたりは悪くないの」

「いいんだ。責めるつもりはない。責める立場にもないよ。ふたりから叱られてもしかないと思ってる」

斗真は笑っていたがどこか辛そうな表情に、ますます彼に対して申し訳なさが込み上げてきた。
でもあの時はこれがベストだと思っていた。今だって正解は分からない。
でもこうして時間は確実に進んでいる。道がまた重なるか重ならないかは分からない。

「斗真はみんなと連絡とっているんだね」

話を変えると、みんなとは時々メッセージのやり取りをしてみたり、困った症例があると薬の使い方の相談をしたりしていると言っていた。プライベートでも仕事でも繋がりがあるようだった。こうして仕事の相談ができるのも大学で将来を見越したチーム医療を勉強してきたからアドバイスをもらえる相手がわかるのだろう。ベストな医療が出来るように他職種について勉強してきたのが生かされてるのだと身近で感じ、嬉しくなった。私には今役立てていることはないけれど、みんなとの繋がりを大切にしていって欲しいと心から思った。
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