エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
懇願され、私は閉口する。
御曹司をソファで寝かせてもいいのかな。かなり気が引けるな、と思った矢先。

「本当にいいのか?」

往生していた清都さんが、観念したようにつぶやいた。

「はい、大丈夫です。実家にも連絡しますから」
「……ありがとう、恩に着るよ」

清都さんは済まなそうに言って、肩を脱力させ心ばかり微笑む。

私は母に、遅くなりそうだからホテルに宿泊すると連絡した。
仕事が長引いたと思っているらしき母からは、『お疲れ様、ゆっくりしておいで』と返信があった。

こみ上げる罪悪感を振り払い、つけていた指輪もはずすと、ケースの中に大切にしまう。

「ビールでいい?」
「あ、はい」

清都さんに聞かれた私は、気持ちを切り替えて笑顔で応えた。

ミニバーからクリスタルビールを取り出すと、清都さんは開栓しグラスに注ぐ。

「どうぞ」
「ありがとうございます」

私はグラスを受け取り、ソファにちょこんと座った。
隣に腰を下ろした清都さんとグラスを合わせる。

「今日はお疲れ様。一生懸命で自然体で、映美が素敵な女性だと両親にも伝わったと思う」

私にはもったいないくらいの褒め言葉。でも、力になれたのならうれしい。

重圧から解放され、私は心からホッとした。

「とても恐れ多いお言葉を、ありがとうございます」
「お礼を言うのはこっちだよ。助かった」

クイッと口角を上げる清都さんの笑い方があまりにも魅力的で、私は不意に目をそらす。

ジャケットを脱ぎ、シャツのボタンを上からふたつはずしたオフモードでビールを煽る姿は新鮮だ。

見つめているとバレないよう、私も口もとでビールグラスを傾ける。
気づけばふたりであれこれ話しながら、ビールをどんどん消費していた。

「さっきお母様が仰っていたノアさんという方が、清都さんの婚約者ですか?」

アルコールで思考がふわふわしてきた私は、気になった質問を口にする。
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