エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
白鳥部長が二十九歳の若さで、日本を代表する大会社の飲食店事業部長の地位にあるのは、クリスタルビール株式会社取締役社長、白鳥正隆(まさたか)氏の長男だからである。

入社後、実地研修として店舗運営のノウハウを学んでいた白鳥部長と、バイトを始めたばかりの私はともにこの店舗で働いていた。

新人時代を一緒に過ごしたからか、御曹司と平社員というかけ離れた立場だけれど、未だに仲間のような気分で、信頼感を抱いている。

「でも森名店長、あまり気負わないで」

言いながら、白鳥部長は私を真っ直ぐに見つめた。
吸い込まれそうなほど澄んだ瞳を向けられて、ドキッとする。

「スタッフたちにも仕事を割り振って、森名店長だけが背負わないようにしよう」

気負っていると言いあてられ、恥ずかしいと同時に温かい気持ちになった。
白鳥部長の優しさがうれしいし、心強い。

「はい、お気遣いありがとうございます」

私がぺこりと頭を下げると、白鳥部長は目を細め、やわらかく微笑んだ。
改めて真正面から見ると、カッコいい。

白鳥部長には、人目を引く華やかさがある。

サラサラの髪もアーモンド型の瞳も、艶々に輝く黒い宝石のようでとても美しい。
鼻は高く整っており、ほんのり口角が上がった唇からは穏やかなバリトンボイスが紡がれる。

それに百八十センチを優に超える長身で、長い四肢のすらりとしたスタイルはモデルと遜色なく、モノトーンの細身のスーツを素敵に着こなしている。
 
今まで生きてきた中で、ここまで品がよく、完璧に整った容姿の男性を見た経験がない。
眉目秀麗という言葉は、白鳥部長のためにあるんじゃないかと思えるほどだ。

対して私はというと、身長も体重もたぶん女性の平均くらい。肩より少し長いダークブラウンの髪の毛は、仕事中は後ろで一本に束ねている。

二重目蓋の目は母に似てぱっちりと大きい方だけど、仕事中のメイクは簡単に済ませているし、おそらくさほど印象に残らない地味めな顔立ち。

だから、美麗な容貌の白鳥部長と一緒にテラス席に座るのは、なんだか気後れしてしまう。

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