エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
「でも安心して。清都があなたがフィアンセだと言い張るのなら、私もそういうことにしておくから」

こんな複雑な感情を抱いているときでさえ、見惚れるほどかわいらしくウインクをした乃愛さんが、「じゃあね」軽快な足取りで私の目の前から去っていく。
嘘を暴けて楽しかったと言わんばかりに、キラキラときらめく笑顔を残して。

乃愛さんの後ろ姿が遠ざかり、視界に入らなくなっても、私はその場から動けずにいた。

今日一日のハイライトが、頭の中で無声映画さながらに浮かんでは消える。
そしてひとつの可能性に気づき、私は乾いた唇を小さく開いた。

「清都さんの好きな人って……」

『実はね、彼がそういう会社やっていて。優先的に動いてもらったの』

もしかして、亜紀さん?

『たしかに亜紀さんは素晴らしい店長だし、素敵な女性だから、目指すのはかまわない』

私が店長という重責に自信がないとき、清都さんからそう言われた。

清都さんは、亜紀さんがプリズムを辞める前にアプローチしたけれど、お付き合いしている彼がいると振られたのではないだろうか。

本当はご両親にだって亜紀さんを紹介したかったのに、叶わなかったから私にその役が回ってきたんだ……きっと。

「なんだ、そうなのか……」

事情はわかったけれど、胸がすく思いなんてとてもじゃないけど感じられない。
むしろ心は暗闇に支配され、ここが通行人の多い歩道だというにもかかわらず、息苦しさにしゃがみこんでしまいたい。

『今、映美を自分のものにしたいと思ってる』

私は亜紀さんの代わり?

とろけるほど甘い声色も、汗で湿った肌の感触も。くすぐったい指の動かし方も、いとおしげな光が宿る眼差しも。

本当は全部、亜紀さんに向けられるはずだったの?

「そ、そんな……」

胸が締め付けられる苦しさで、清都さんへ恋心の本気さを思い知るなんて……。

残酷な仕打ちに、下唇をキュッと噛み、私はあふれそうになる涙を堪えた。
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