エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
「映美ちゃん、こっちこっち」

待ち合わせの午後十二時にプリズムに着くと、亜紀さんがテラス席に座り優雅に手をひらひら振っていた。

「亜紀さん、こんにちは」

昼間から飲んじゃおうか、といたずらっ子みたいに微笑む顔は、魅力的でとてもかわいらしい。

私もビールを頼み、顔見知りのスタッフたちと接客の合間にお喋りして、懐かしく楽しい時間が過ぎていく。

「お待たせしました、パストラミビーフピザです」

運んできた千花ちゃんが澄まし顔で言った。

「わぁ、ありがとう。早速いただきます」

私と亜紀さんがピザを手に取り、大きな口でかぶり付く。

「うん、美味しい! 懐かしい味ですね」

特製のパストラミがトマトとオリーブに合っていて、プリズムで人気の一品だ。トロトロのチーズがとろけてとっても美味しい。

熱いのを我慢して、私は一切れをあっという間に食べきった。

「こうして懐かしい顔を見て、美味しい料理をいただいてると、たくさんの思い出が蘇ってくるわね」

テーブルに頬杖をつき、亜紀さんが懐かしそうに目を細める。

「映美ちゃんが大学の単位を落としちゃったときは、シフト入れすぎたぁーって反省して、すごく焦ったなぁ」

睫毛を伏せ、亜紀さんは不本意そうに唇を尖らせる。

「あ、あのときは本当にすみませんでした……! でも集中講義でなんとか取り返したので、全然大丈夫でしたよ!」

私は必死で平謝り。
たしかにバイトに夢中で単位を落としたけれど、必修科目ではなかったからほかの講義で必要な単位は取り戻せた。

その詳細を、亜紀さんはつぶさに覚えているようだった。

「副社長が家庭教師みたいにみっちり映美ちゃんについて、レポート作成を手伝ったのよね」
「はい……。そうでした」

そのときにはもう、事業部長として忙しくしていた清都さんが、経済学は得意だからと言って手伝ってくれたんだ。おかげで完璧なレポートを提出できた。

「それから、ビール醸造所の見学で試飲品を飲みすぎて、寝ちゃったこともあったわね」

口もとでビールグラスを傾け、亜紀さんが私に目配せをする。
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