エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
「そんな、謝らないで、千花ちゃん」

千花ちゃんはゆっくりと顔を上げると、緊張をほどいて柔和に微笑む。

「だけど今、亜紀さんの話を聞いたら、悲しませるどころか映美さんをとても大切にされてたんだなってわかりました」
「千花ちゃん……」

私を心配してくれたんだ……。
あのときは結構傷ついて、でも店長として悟られないように強がったつもりだったけれど、バレていたみたい。

「ありがとう、千花ちゃん」

にっこり顔の千花ちゃんと照れながら笑い合っていると、店内がざわざわと騒がしくなってきた。
スタッフたちの動きが一段と機敏なのだ。

店内の変化に気づいた千花ちゃんと亜紀さんが、同時に小さく「あ」っと発した。

ふたりの目線をたどると、トクンと小さく高鳴った鼓動が次第に力強くなる。

なぜなら、スタッフたちに囲まれた人物を見つけたからだ。副店長と談笑しながらこちらに向かって歩いてくる。

清都さんだ……。

見つけてからずっと、魔法にでもかけられたように目をそらせない。

距離が縮まった清都さんは、カッターシャツに紺色の綿のジャケットという、普段よりもラフな格好をしていた。

突然の登場に呆然とする私を見て、清都さんはフッと頬をほころばせる。

「副社長! ど、どうされましたか? 今日は来られる予定ではありませんでしたよね?」

私と亜紀さんが座るテーブル席の前で足を止めた清都さんに、千花ちゃんが焦り気味に大声で聞く。

「今日はオフ。プライベートだ」

まだ幻でも見ている気分でぽかんとする私を見下ろし、清都さんは平然と続けた。

「悪いけど、ギャラリーはなしで頼む。口説きに来て、フラレたらカッコ悪いだろ?」

そして、片目を細める魅力的な表情で、亜紀さんと千花ちゃんを交互に見た。

「そういうことでしたら応援してますね、副社長!」

笑顔を弾けさせ、元気に言うと千花ちゃんは仕事に戻る。

「それじゃあ私も失礼するわね」

亜紀さんがバッグを持って椅子から立ち上がった。
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