エリート御曹司は極秘出産した清純ママを一途な愛で逃がさない
「えっ、ちょ、ちょっと待ってください!」
「ここからはおふたりでごゆっくり」

訳知り顔で会釈すると、亜紀さんは私の声を聞かずに颯爽と去っていく。

「もしかして、亜紀さんが清都さんを誘ったのですか?」

亜紀さんが座っていた席にすとんと腰を下ろした清都さんは、ニッと口を広げて微笑んだ。

「ああ。なんだかきみがこのあいだから深刻な顔をしていると、亜紀さんが心配していてね。俺たちの間にわだかまりがあるなら解消してほしいと、この場を設けてくれたんだ」

スラスラとよどみなく話す間に、私は頭を整理する。
つまり、亜紀さんが私たちの関係がぎくしゃくしていると察して、ふたりで話す機会を作ってくれたんだ。

そんな思惑があったなんて、全然気づかなかった……。

「そうですか……」

けれど、このまま清都さんの誘いを断り続けるのは無理だとわかっていた。
だから亜紀さんがチャンスを作ってくれたのは、好都合だと言ってもいいかもしれない。

「その、私が深刻な顔をしているように見えたのは、清都さんにお聞きしたいことがあるからで」

真っ直ぐに前を向いて尋ねると、清都さんは片眉をピクリとつり上げた。

「聞きたいこと?」
「はい。お父様がご病気で入院中だそうですね」
「ああ、話そうと思っていたんだが」

少し面食らったような表情で、清都さんが答える。
私は深呼吸をして、意を決した。

「私と結婚するのは、跡継ぎとして光太が必要だからですか?」

ストレートに疑問をぶつけると、清都さんは目を剥いた。

「え?」

前かがみになり、それから一瞬目をすがめて渋面を作ると、すぐにいつもの冷静な面差しに戻る。

「きみは、なにか誤解をしていないか」
「え?」

誤解……?

清都さんはテーブルの上で両手を組み、目をぱちくりさせる私を弱ったような顔つきで見つめる。

「父は持病の検査で入院し、たしかに治療のため少し長引いたが、来週退院予定だ。映美には余計な心配をかけないためにも話してなかったけれど、父の病気はすぐに命を脅かすものではないよ」

穏やかなトーンで丁寧に説明すると、今度は聞き入っていた私に鋭い目を向ける。

「俺が、光太を跡継ぎに迎えたいがためにきみと結婚したい、とでも?」
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