先生の愛が激重すぎる件
 先生は声を上げて両腕を振り上げた。周囲の人達の視線が刺さる。私は慌ててその手を掴んで下に降ろした。

「ちょっと! 落ち着いてください。みんなに見られてますよ」

「むりむり、めちゃ嬉しい。俺、叫んでいい?」

 そんな風に喜んでもらえたら私だって嬉しい。けれど、

「叫んだら、付き合うのやめます。いいんですね?」

 先生をじっと見た。これじゃまるで大型犬を躾ける飼い主みたい。

「そんなこと言うなよ。叫ばない。俺は叫ばないぞ」

 私の両肩を掴んで言いながら、自分を納得させるように何度も頷く。なんだかかわいく思えてしまう。

「ならいいです。ああそれと、病院では私たちが付きあっていることは内緒にしてくださいね」

 今言っておかないと、朝から院内中に吹聴して回りそうな気がした。

「ええ? どうしてだよ。変な虫がつかないように交際宣言するべきだろ」

 変な虫なんてつくわけがない。現に今まで付いたためしがないんだから。

「大丈夫ですよ」

 けれど先生は首を縦に振らない。

「全然大丈夫じゃないぞ。……あ、いいこと思いついた」
 
「いいこと?」

「俺と一緒に暮らさないか?」

「いやいやいや、そんなのムリです。いいましたよね、先生のことはまだ好きになったわけじゃないって」

「むしろ、だから一緒に住むのが一番いい。お互いのこと知れるし、もっと仲良くなれる。俺のいいところもたくさん知ってもらえるし、そう努力する」

 先生の言い分は一理ある。

けれど、「はいそうですか」と快諾することはできない。だってまだ、先生と付き合ことでさえ戸惑っているというのに。

「おいおい、そんなに悩まないでくれよ。じゃあ、こう考えるのはどう? 俺のマンションに住めば今払っている家賃分浮くだろう? 仕送りに当ててもいいし、明日美の小遣いにしてもいい。そんなに悪い話じゃねえと思うけどな」

「先生はそれでいいんですか?」

 私が先生と暮らす理由が家賃を浮かせるためだなんて、いいわけがない。けれど先生は曇りのない目で私を見ていった。

「ああ、問題ない。明日美が俺と暮らす理由はなんだっていいんだ。毎日一緒にいられたら俺は満足だからな。惚れちまった弱みだ」

「ハハハ」と先生は笑った。

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