先生の愛が激重すぎる件
ここでの生活もあと十日ほど。鷹藤さんは最終公演のため都内にいるのだけれど私が部屋を借りているからホテル暮らしをすることになってしまっている。

ヴェガだって飼い主に会いたいに違いないし、部屋が決まった今、一刻も早くここを出ていくべきなのかもしれない。
 風呂上がりに私は鷹藤さんへLINEを送った。ヴェガの写真とともに。

すると少しして電話が掛かってくる。

『もしもし、明日美? 話したいことなに? もしかしてなにかあった』

 まるで“何か”を知っているような口ぶりに私はかすかな違和感を抱く。

「どうしてそう思うんですか?」

『だって話があるなんて言うから何かあったのかと思ってさ』

どうやら思い過ごしのようだ。私の身に起きているいろんなことを鷹藤さんが知るはずがない。

きっと心が不安定になっているからだろう。少し冷静にならないといけない。

「……あ。そうですよね。驚かせてしまってごめんなさい。いま、外ですか?」 

 電話の向こう側はガヤガヤと賑やかで大勢の話し声が聞こえる。

「急ぎの要件ではないので後でもいいです」

『平気さ。スタッフと食事に来てるだけだから。大事な電話があるっていってきたし、しばらくは戻らなくても大丈夫。それで、話って何?』

「早めに部屋を出ようかと思ってます。鷹藤さん都内に戻ってきたのに家に帰れないなんて不便だろうなって」

『ありがとう、明日美。僕に気を遣ってくれて。部屋、決まったんだね』

「はい。だからいつでも出ていけます」

『明日美さえよければ出ていかなくてもいいんだよ。前にも言ったけど僕は君のことが好きだし、』

「ごめんなさい!」

 話を遮るように私は言った。

「いろいろとお世話になって感謝はしてます。でも、鷹藤さんの気持ちは受け取れません」
 
 もしかしたら今後、彼の気持ちを受け入れる選択肢もあったかもしれない。でも、荒木先生と子を授かってこの子と二人で生きていくと決めたから……。

『明日美。それでも僕は諦めたくない』

「鍵はマンションのコンシェルジュに預けておきます」

 そうとだけ言ってスマホの電源を落とした。

私はスーツケースに荷物を詰めるとヴェガの水を替えてドッグフードを皿に追加する。

ヴェガはくーんと鳴いて私の足元に擦り寄ってきた。

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