恋の魔法なんて必要ない!~厭世家な魔術師と国外逃亡した私の恋模様~
次の日。
納屋の木の隙間から光が差す。
ぱっちりと目を覚ましたアンナは外に出て朝日を浴びながら大きく伸びをした。
やはり、気持ちのいい朝──やはり良い一日というものは寝起きの良さで決まる。
寝ぐせを手で撫でつけ、服についた藁を払う。
一番歩きやすく軽いドレスを着てきたため、シワがつくわ泥がはねるわで、見るに堪えない格好だった。
まあまあまあ、これくらい気にしない。
お陰で疲れは最小限だし、もう身体は回復したし。
十分十分。
いつまでもお嬢様気分でいるわけにはいかないのよ、アンナ。
シーツはドレスの泥で少し汚れてしまっているが、仕方がない。
洗濯している時間はないから謝って返そう。
今、最優先なのは、ここを離れもっと遠くへ逃げること。