恋の魔法なんて必要ない!~厭世家な魔術師と国外逃亡した私の恋模様~
お皿と毛布を抱え、納屋を出た。
彼は起きているだろうか。
煙突からの煙は...上がっていない。
屋敷の正面に回り玄関のドアをたたいてみるが、返事はない。
いないわけはないと思い、庭のふかふかの芝を歩きながら姿を探す。
しばらくして、ようやく見つけた。
扉を薄く開けた木の小屋の裏を覗いてみると、菜園のようなところがあり、そこで水やりをしていたのだ。
そして驚くべきは。
彼の表情は、昨日暗がりで見たそれとは打って変わってとても優しかった。
こんな顔、出来たんだ、と。
昨日の暗い雰囲気は嘘のように消え去っていた。
足元に気を付けながら近づく。