恋の魔法なんて必要ない!~厭世家な魔術師と国外逃亡した私の恋模様~

数日後。


足の調子は良くなっているが全快とは言い難く、暫く治療院を閉めていた。

暇を持て余した私は、フェランドールの童話を読むことにした。


ベッドに寝転び、比較的大きな本を捲りめくり。


子供向けの本は、簡単な言葉遣いではあるけれど独特の言い回しが所々にある。

と、クロエが勉強に良いのではと教えてくれた。


それは狼と羊の話。

嵐の夜、二人は出会いお友達になって。

でも自然界において食うものと食われるもので...。


初めて読んだときは怖かったけれど、とても好きな話だ。




───かたん。

ふと外で聞き慣れない音がして、ひょこひょこ遅い脚で戸口へ向かう。


町の配達員が去っていったところだった。


不思議だ。

玄関先まで急ぎ、足元のブリキの箱を覗く。

郵便受けの代わりに使っている缶は、今まで使われたことは無かった。


ごそごそせずとも取り出せた便りは、淡い緑色に藍色の蝋で留めてある。



それは一通の、


────イヴァン・ハンノルド殿




国王からの手紙だった。





しかも、すごく分厚い。

思わず二度見。




え、なになになになに。



王なんていう国家元首から連絡が来るってどういうこと?

なにかやらかしたの、それともすごくいい事をしたとか。



──届けなきゃ。




良い事か悪い事か知らないが、それは、もしやあの小屋でしていることなのかしら。

そもそも、イヴァンは何を1日中やっているのか。



開けたい気持ちは山々だけど、そこまで詮索していい関係じゃ...ないわ、私達は。


本当に、全く、全然、一切...そんな仲じゃない。





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