恋の魔法なんて必要ない!~厭世家な魔術師と国外逃亡した私の恋模様~
「袖を裏返せ」
さっきよりも数倍鋭くなった声に小さく体が震える。
罪人になった面持ちで左腕の袖を捲り、正方形に折られた紙の包みを出した。
「アヘンか」
「......ええ、そうです」
大丈夫、私にはやましいことなんてない。
ちゃんと説明すれば大丈夫。
必死にそう言い聞かせる。
弁解しようと口を開くが思ったように声が出ない。
「あ、の。これは....」
「...ついて来い」
彼は私の言葉を遮りおもむろに立ち上がると、屋敷の方に歩いて行く。
見上げるほどの背の彼は、歩幅が大きい。
小走りで追いつき、私は屋敷へと足を踏み入れた。