恋の魔法なんて必要ない!~厭世家な魔術師と国外逃亡した私の恋模様~
また消極的な思考を掘ってしまった私に、無機質な声が届く。
「父が、そう命じた」
無表情で──でも目の奥はどこか懐かしそうに、悲しそうに、優しそうに──そう言った。
「まぁ、一番の理由は俺が料理ができないからだがな。あの野菜の名前は知らないが...俺は昨日のスープしか作れん」
「その野菜、ブロッコリーって言うのよ」
「覚える気はない」
こちらまで涙が出そうになるような憂いを帯びた顔から一変、あっけらかんとした様子で食事に戻る彼。
父、使用人、イヴァンの表情。
ああ、そういうことかと、納得がいった。