恋の魔法なんて必要ない!~厭世家な魔術師と国外逃亡した私の恋模様~
しかし続く男の言葉で無慈悲にも私の淡い期待は崩される。
「断る」
「っ、待って!」
扉を閉めようとする男に、にわか叫びに似た声を上げる。
ここで負けてはいけない。
泊まれるところはもうここ以外きっとないだろう。
図々しさが大事なのよ、アンナ。
「お願い...ひとりぼっちなの」
その人は動きを止めてこちらをじっと見つめる。
情に訴える作戦?は通用しないかもしれない。
でも今の私にはこの他手がなかった。
「逃げてきた...でも死にたくない...」
とてつもなく長く感じた沈黙の後。
彼は髪を掻き上げ、面倒くさそうにため息をついた。
「納屋で寝ることは許そう」
パタン、とドアが閉まる音がして、顔を上げる。