恋の魔法なんて必要ない!~厭世家な魔術師と国外逃亡した私の恋模様~
納屋の場所もわからないけど。

大きいからすぐ見つかるだろう。


やった。これでとりあえずは暖がとれる。


納屋に藁はあるはず...よね。

うん大丈夫、それがあれば布団になるから。


明日たくさん歩けるようにしっかり休まないとね。



洒落た鉄製の門を開け、屋敷の裏へ周る。

納屋は意外と物が少なく、隅のほうに申し訳程度にわらが積んであった。


藁を引っ張って平らにし、ハンカチを取り出し、ひらりと広げる。

まあ......枕代わりにはなるか。

薄い布を藁のベッドの頭のほうに被せ、寝転がって目を瞑ってみる。


寝心地は......良いとは言えない。


王子の許嫁だった侯爵令嬢が、わら布団で寝るとは。

少しだけ自嘲してみる。


でも縁は切ったのだから、今や私は普通の平民だ。

──父上が、あの書類にサインしていれば。


寮を出る前、ベッドの上に学校長と両親への手紙を書いておいた。

父へ絶縁のための書類を同封していたのだ。


生まれは騎士階級の父なら、まだ許してくれる可能性が高いだろうか。

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