恋の魔法なんて必要ない!~厭世家な魔術師と国外逃亡した私の恋模様~
もはやランドシャール家にとって、私は縁を切っても切らなくてもどちらにせよ使えない存在だ。
だから成功の可能性は高い。
この藁の不快さも、自由になるのに必要なだけ。
そう思うと叫びだしたいくらいの解放感でいっぱいになった。
だめだめ、寝なくちゃ、と寝返りを打った。
が、人の足音が近づいてきたためすぐに起き上がる。
戸口に、あの人が立っていた。
「腹が減ってるんなら、食え」
ぶっきらぼうに言いながら床に毛布と食事の入った皿を置いた。
そして立ち上がって私を一瞥し、去っていく。
慌てて戸の方に走っていき、もう屋内に入ろうとしていた彼に大きな声で呼びかける。
「お気遣いありがとう!お名前は?」
するとその人は聞こえているのかいないのか、こちらをちらりと見やり、パタンと戸を閉めた。