ひと駅分の彼氏
「うん。それに気分転換だって必要だよ?」


「なるほど。俺との会話は気分転換か」


「う、うん」


本当は1日の内で一番重要な時間だったけれど、会話の流れ的に頷いてしまった。


真琴は特に不愉快そうな顔をみせることもなく、話をつづけた。


「じゃあ、今日は去年の夏のことを話そうか」


去年の夏も私達は一緒に居た。


そして様々な場所に遊びに行ったんだ。


思い出すと顔が自然とニヤけてしまうくらい、楽しい毎日だった。


「去年の夏の思い出は沢山あるよ?」


とてもひと駅分の会話じゃ足りないくらいだ。


「う~ん、そうなんだよな」


真琴も顎に手を当てて考え込んでいる。


そうしている間にも電車は動き出して、私達を次の駅へと運んで行く。


「そうだなぁ。じゃあ、あの時のことは覚えてる?」
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