もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 どう話を切り出そうかと考えながら玄関へ向かう。

 靴を脱ぎ終えた蒼史さんが出迎えた私を見て、一瞬不思議そうな顔をした。

「蒼史さん?」

 奇妙な反応をされた気がして名前を呼ぶと、突然彼の腕が伸びてくる。

「柚子」

 蒼史さんにしてはやわらかく力のない声が聞こえ、きつく抱きしめられた。

 なんで私は抱きしめられてるんだろう?

 突然のことに理解が追い付かず硬直する。

 蒼史さんはますます私を腕に閉じ込めるばかりで、まったく放す気配がない。

「君がいると安心するな」

「……え」

 今のは私の幻聴? それとも聞き間違い?

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