もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 答えをくれるはずの張本人は私の肩口に顔を埋め、ゆっくり呼吸をしている。

「あの、蒼史さん……」

 万が一聞き間違いじゃなかったとしたら、この状況はいったいなんだというのだろう。

 もしかして夫婦の演技をしている? でもどうして急に?

 混乱する私を蒼史さんが覗き込んでくる。

「本物か?」

「本物です、けど」

「……夢じゃなかったんだな」

 蒼史さんの顔が近づいて、咄嗟に目を閉じてしまった。

 これまでにされたどれとも違うキスが唇に落ち、ますます困惑する。

「これも練習ですか……?」

 久しぶりのキスに胸をときめかせていることを悟られないよう、努めて冷静に質問してみる。
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