もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
「だから結婚しないと決めていた。優秀な医者であることと、温かい家庭を築くことは両立できないからな」

 後部座席のチャイルドシートから、さくさくと小気味いい音が聞こえる。優史がクッキーを食べている音だ。

 ちなみにあのハウスキーパーの──美里さんのお母様は、優史のためにたくさんのお菓子をお土産に持たせてくれた。

 彼女の存在だけがあの家で温かかったと、今は思う。

「昔から……あんな感じだったんですね」

「そうだ。異常だろう?」

 なんの感情もなくさらりと言われて言葉に詰まる。

「異常だとまでは……。いろいろな家庭があるんだなと思っただけです」

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