もう恋なんてしないと決めていたのに、天才外科医に赤ちゃんごと溺愛されました
 揉めている男女の姿を陰からこっそり盗み見る。

 こんな場面に出くわすくらいなら、病院の裏手にある自販機になど来なければよかった。

 大和に私の好きなメーカーの缶コーヒーがあると聞いて買いに来た結果がこれだ。

 ほくほくしながら帰ろうとしたらこんな状況で、出るに出られない。しかも病院内に戻るには彼らの前を突っ切らなければならなかった。

 しかも、だ。揉めているふたりの片方には嫌というほど見覚えがある。

「術後の経過について話があるというから来たが、君が話したかったのはこんなくだらないことだったのか?」

 聞いているこっちが泣きたくなるくらい辛辣で冷たい声は、八柳蒼史先生のもの。

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