あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い
 
 気づくとひとつの植栽された箱形の前で立ち止まり、花を見つめてしまっていた。

 「このニチニチソウ可愛い色ね。こんな色も最近あるのね。知らなかったー」

 つぶやいている自分に気づいて、びっくり。

 時間がない。急いで歩き始めた。
 
 私の後ろから、視線を感じたが、腕時計を見ると時間がないことに気づいた。

 その時はそのまま早足で会社へ戻った。


 水曜日、いつものバーへ行く。

 水曜日は少しおしゃれして来るようになったので、会社の人に今日からかわれた。
 
 「早瀬さん、今日は習い事とか?」
 
 ……皆さん、私には色事は絶対ないと思っているのね。
 
 「まあ、そんなとこです」


 今日は、入り口をくぐると珍しくソファ席へ。

 バーに来るとき気づいたのだが、今日通った道が真下の通りだった。

 窓の下を見ると、私が昼間見ていた、マリーゴールド達が見える。

 なんだか、友達に会えたような気がして、ほほえんでしまう。


 座って、バーテン君にいつものものをお願いし、ぼんやり下を見ていると人の気配がした。

 「玲奈さん、彼がここの席相席してもいいですかと聞いてますよ?どうします?」

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