あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い

 人影が下りて、バーテン君がサービスですよとウインクしてフルーツの盛り合わせをテーブルに持ってきた。
 
 「宗吾さん。玲奈さんはいつも窓際のここにいる貴方を見つめていましたよ。日焼けした姿が素敵と言ってました」
 
 「「え?」」
 
 ふたりして、顔を見合わせて真っ赤になる。
 
 バーテン君はフフと私を見ながら笑い、頑張ってと言う意味でガッツポーズをしてくるりと後ろを向いて戻っていく。

 バーテン君め。余計な一言を勝手に言わないで。
 
 下を向いてまたもやカクテルのグラスを回していると、彼が話しかけてきた。

 「私も、貴女の後ろ姿を来るたびに見ていましたよ。背筋が伸びて、姿勢がいい。うなじが見えて……」
 
 「え?」

 「いやいや、それよりも僕を見ていたというのは?」
 
 「……すみません。健康的な感じでいらっしゃるし、体格もいいし、そのスーツがかっこよく決まってて、私の会社ではそれほど筋肉質で太っていない人って少なくて。あなたのようにかっこよくスーツを着こなしている人を見たことがなかったんです。それでつい見とれてしまって、見入ったりして。すみません」

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