あのスーツ男子はカクテルではなく土の匂い

 コポコポとコーヒーを入れる音。
 コーヒーの香り。
 
 「……コーヒーの香りも好きです。紅茶のアールグレイも好き」
 
 つぶやいてしまった。

 城田さんはにっこりしながらコーヒーカップを差し出した。
 
 「そうだね。これも香り。植物の実から出来ている。僕もコーヒーは大好きだよ。焙煎とかしたいけど、本業の香りがわからなくなりそうだから、我慢してる」
 
 「そうなんですね。じゃあ、私が城田さんの好きなコーヒーを探してあげましょうか?色々豆を混ぜたりして」

 城田さんは、じっと私を見つめながらコーヒーを飲んだ。
 
 「玲奈さん。お付き合いしている人いますか?」
 
 「いいえ」

 「良かったら、僕とお付き合いしてもらえませんか?」
 
 嘘みたい。嬉しい。こんな気持ちにまた、なれたことも嬉しい。
 
 「はい。私で良ければ喜んで」

 「……良かった。こんなとこに連れてきておいて、今更だけど。君を見ると何かびびっと来るモノがあってね。芸能人みたいだけどさ。でも、植物が好きだと聞いて、直感は間違っていなかったと思ったよ」
 
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