君がたとえあいつの秘書でも離さない

 匠さんは、すぐに私を抱えて荷物を直也さんに渡した。

 「匠、病院に連絡しろ」
 
 直也さんは荷物を片手で持ち、皐月の手を繋いで出てくる。

 店の人が驚いてこちらに来た。

 私は急にお腹が張り出して、痛みがあると歩みが止まってしまう。

 匠さんは私をお姫様だっこして歩き出した。

 「恥ずかしい。匠さんやめて」
 
 「黙れ。すぐに医者へ行くぞ」

 その日、病院に入り、丸一日陣痛に耐えた。
 
 初産だったせいか時間がかかった。
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