君がたとえあいつの秘書でも離さない
「匠さん……」
「こんなはずではなかったとスキャンダルに巻き込まれたときから自分に自信がなくなった。弘君の暴挙は自分のせいだと君は責めていたが関係ないよ。君を守っていくと決めたのに、結局守ってもらったのは俺だったな。何が起きようと君と生きていくという希望が一時期どん底にいた俺の糧になっていた」
彼の手を今度は私が握る。
「私ね、どん底にいたとき赤ちゃんのことが分かって、何があってもこれでずっとあなたの側にいられると思ってほっとしたの。お父様に反対されたのも頭では理解できた。でも辛くて身体がおかしくなりそうだった。だって、障害があることはわかっていて絶対負けないって思ってこの道に踏み出したのよ。貴方を守るためとはいえ、他に方法がないか悩んでいたら赤ちゃんが助けに来てくれたの」
彼はにっこりと笑い、私の腕を引いた。おでこにキスが落ちる。
「遙。運命なんて陳腐な言葉は経営者としては信じたくないんだが、直也達も俺達もなにかに引き寄せられてここまできたのかもしれない。どちらも子供に恵まれた。これからも運命が続いていくんだろうな」