【短編】悪役令嬢は全力でグータラしたいのに、隣国皇太子が溺愛してくる。なぜ。
 前世では薄給だったため節約していた知識が役に立ったのだ。
 すでにそれぞれの部門長に運営を任せたので、これからはオーナーとして利益を享受するだけになっている。

 ついでに仲良くなったご令嬢たちから、王太子殿下の命令で逆らえなかったと聞き、浮気の証言をたくさんもらうことができた。

「……ユーリエス。確かにここ最近は落ち着いたようだったが、婚約解消までしなくてもいいだろう?」
「いいえ、王太子殿下は変っておりません。これ以上は前から考えていたことです」

 というか、人前に出たくない。ずっと引きこもってグータラしていたい。前世で働きまくって死んだので、ここでは平穏にのんびりと暮らしたい。

 それにこの縁談は王家から打診されたものだ。こちらとしては忠誠心を示すために受けたが、王太子の度重なる浮気が原因なら、国王も納得してくれるだろう。

「ユーリエス……そんなに自分を責めていたとは……気付いてやれなかったな。わかった、婚約解消はなんとかしよう。しかし国から出るのは私が許さない」
「お父様、それでは罪を犯した罰になりません。幸いにも帝国で事業が始められるよう準備は整えてあります。これくらいの苦難でなければ、皆様が納得されません」
「まったくお前は……わかった。好きにしなさい。だが公爵家の護衛騎士はつけるからな」
「ありがとうございます、お父様」

 そう言って淑女の見本のようなカーテシーをして、お父様の執務室を後にした。



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