捨てられる前に、最後にひとつよろしくて?
自分達がモデルになっているということがまだ救いなのか何なのか。
今は何処かに穴があったら、一生そこで過ごしたい気持ちだ。
私を怒らせてしまったと勘違いするクラデスが謝ろうと近づいてくるタイミングで、寝室の扉が大きく開かれた。
「クラデス殿下?!」
入ってきたカイは、何かあったのかと身構えたが、寝台で繰り広げられている私達を見て血の気を引かせていた。
傍から見たら、乱れたドレス姿で半泣き状態の私が殿下に迫られているとなれば、間違った解釈をしてもおかしくはない。
どちらを止めに入ったらいいのか慌てふためくカイに、クラデスは事態を説明し始め、私の正体を見事に晒した。
「えっ!?先生なんですか?!俺、大ファンで!!この前の出店にも、隠れて参加しました!」
「ほらね!マージュ、君の作品は本当に素晴らし――」
恥ずかしさと怒りが爆発した私は、手に取った枕を手に取り、見事二人の顔面にヒットさせる。
あまりの枕の重たい衝撃に低い唸り声を上げた二人に、私はお構いなく叫んだ。
「もうこのまま私を捨ててください!これが最後の願いです!!」
その声は客室だけでなく、廊下にいた侍女達の耳にも届いた。
一時は私達の関係が危ういのではと噂されるようになったが、そんな噂は愛の力で消し去った。
後に、とある一国の王子と令嬢の婚約破棄を賭けた戦いの物語が巷で流行るのは、私がお腹に新たな命を宿しながら執筆作業に追われる日々を送ったその先のお話。
FIN.


