月へとのばす指

 唯花が小さく叫んでもだえる。若い蕾のようなやわらかい乳首が、吸いつき舌で舐めるに従って、固さを帯びていく。

「あ、ぁ……っ、っふ、うぅっ」

 声がくぐもったのが気になって顔を上げると、唯花は両手で自分の口をふさいでいた。
 どうやら、自分の出す声が恥ずかしいらしい。その初々しさに胸がきゅうっとなる心地がする。

 彼女の口から手のひらをはずし、手首を拘束する。驚いた様子の彼女に、軽くキスをする。

「声、聞かせてよ」
「……え」
「すごく可愛い声だから、聞きたい」

 ふたつの細い手首を捕まえたまま、唯花の耳たぶをそっと唇で食む。舌先で触れると、あ、と小さな声が上がった。
 その声の響きに背中を押されて、ちゅくちゅくと音を立てて耳を愛撫する。唯花は体を震わせながら体をよじった。

「あっ、あ……あぁ」

 耳でこれだけ感じるのなら、他の場所に触れたら彼女はどんな甘い声を出すのだろう。聞きたくてたまらない、と久樹は思った。
 手首の拘束をいったん解き、唯花が身に着けている物を、一枚だけを残して脱がせた。暗い部屋に浮かび上がるような白い肢体に、久樹はまたごくりと唾を飲み込む。

「きれいだ」

 思わずもらしたつぶやきに、唯花は目を見張って顔をそむけた。どこまでも初々しくて、たまらなく可愛らしい。

 久樹は自分自身の服も、下着以外はすべて脱いでしまう。唯花は顔をそむけたままだ。おそらく、初めて見る異性の裸が恥ずかしいのだろう。

 久樹としても、すでに興奮している証をまじまじと見られたりしたらさすがに恥ずかしいので、今はちょうど良かったが。とはいえ、感触ですぐにわかってしまうとは思うが。

 実際、ゆっくりと抱きしめ直した彼女は、下肢をびくりと揺らしてもじもじさせている。そういった仕草のすべてが可愛く感じられ、久樹は唯花のやわらかな体を、丁寧に味わうように愛撫していった。

 どこもかしこも、踏み荒らされていない雪のように白く、ほんのりと湿った雨上がりの草のような香りがする。熱を帯びていく肌に、唇を、舌を、指を這わせるたび、唯花は甘やかな息と声を小さく開けた口からこぼした。その声がますます、久樹の官能と征服欲を高めていく。

 ……ああ、彼女が好きだ。どうしようもないほど好きだ。
 もっと深く、彼女を知りたい。彼女のすべてが欲しい。
 奥の奥まで……めちゃくちゃに乱してみたい。
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