完璧上司の裏の顔~コスプレ動画配信者、実はファンだった苦手な上司に熱烈溺愛される

「そうだよねぇ」
「私の心配はいらないから、あなたのしたいようにしなさい。私もね、また東京に戻ってまたお茶のお教室を始めようと思うの。あなたのおかげで、家も売らずに済んだし」
「えっ。そうなの?」

 父を喪ってからずっと無気力だった母にそんな気力が芽生えたことが嬉しい。

「人生休むのも必要。だけど生きがいがないとそれこそ腐っちゃいそうで。千紗が演奏してるの見て、今のままじゃ駄目だってエネルギーが湧いてきたの。命を燃やしてるって感じの輝きがあったから」
「命を?」
「そう。楽ってことはイコール幸せじゃないのよね。大変だし辛くても幸せって思えることは大事にしないとね。さて、そろそろ夕飯の支度しなくちゃ」

 母が去ったあとも、千紗はいつまでもそのことを考えていた。
 その夜、井村に自分から電話をかけたが、なんだか新規のプロジェクトで忙しいとかであまり話せず、様子もおかしいから気になった。

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