完璧上司の裏の顔~コスプレ動画配信者、実はファンだった苦手な上司に熱烈溺愛される

 本当は好きだからだと言いたかったが、酔ってない時にちゃんと言いたかった。案の定あんまり理解してなさそうな顔をしていた。
 泥酔した千紗をマンションの玄関まで送る。靴を脱ごうとしてよろけた千紗を抱きとめる。
 
「井村さん……」
「ん?」
「気になるってなんですか」
「興味があるってこと」
「私も井村さん見てるとなんか気になるんですよ。気にしたくなんかないのに」
「えっ」
「でもほかに好きな人がいるんです……だから恋愛とかそういう意味じゃないですから」

 ネットでのやり取りを信じるなら、田吾作のことだ。
 でも井村のことも気になると言う。それはつまり──。
 今すぐ自分が田吾作だと打ち明けてしまいたい。
 だがそれは、嫌われ、軽蔑される可能性も高い。実はこっそりネットでストーカーしていたなんて、突然言えない。まずは信頼を得ないと。
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