飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 ✧˙⁎⋆



 そして雨が止んだ。
 
 サラリーマンのおじさんに「君、大丈夫かい?」と声をかけられて、時刻がもう18時になろうとしていることを知った。


「……はぁ……」


 ぶつかって鞄をひっくり返した場所、雨水が勢いよく流れる側溝の中、踏切の線路の隙間、スーパーの陳列棚の下。


 ……どこにもネックレスはなかった。


 もちろん交番にも行ったけど、届け出はなく。

 そろそろ帰らないといけない。



 失くしちゃった。

 おばあちゃんの愛、失くしちゃった。



「っ……、」



 目尻に涙が滲もうとするのを、ギュッと目をつぶって無かったことにする。

 私はそのまま顔いっぱいに力を入れたまま帰路につき、辿り着いた家のドアの前に立って、軽く深呼吸をする。


 ……すぐ戻るって言ったのに遅くなっちゃったから、心配してるよね。

 笑顔。笑顔。

 顔をもみ込んでから私は鍵を取り出して、鍵穴に差し込んだ。

 

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