隠したがりの傷心にゃんこは冷徹上司に拾われて
 翌朝、出勤早々にと宮本さんに呼び出された。

「猫宮さん、ファイルの共有――」

「昨夜完了しています」

 告げると、「うん、それは見た」と宮本さんは気まずそうに眉をしかめた。
 彼は営業の中でも常に笑顔の、優しいタイプの人だ。そんな彼がこんな顔をする。また、何かしでかしてしまったらしい。

「データの数字、おかしいからチェックしてくれないかな? こっちでも見たんだけど、計算が合わなくて。もう客先に出なきゃいけないんだけど、ちょっと数が膨大で……」

 やっぱり、やらかしてしまった。それも、致命的なミスを。

「すみません、すぐに修正入ります!」

 慌ててデスクに戻り、ファイルを開く。データ元と合わせても、間違っているのは一目瞭然だった。
 なんで、私、こんなミス――。

 悔しさを飲み込み、自身の気のゆるみを戒めるように、カタカタと入力作業を始める。

「どのくらいかかる? 十分くらいでできる?」

 宮本さんの不安そうな声が聞こえて、「できます」と答えた。
 十分じゃ終わらないかもしれない。けれど、終わらせなければいけない。

「宮本さんは、もう出ないとですよね? 資料は添付して送ります」

 打ちながら、声だけで会話する。
 宮本さんは「お願いね」と言ってオフィスを出て行った。

 訂正と格闘し、何とか八分で終わらせた。
 残りの二分で、最後のページのレイアウト修正をした。こっちの方が見やすい。
 宮本さんにメールを添付すると、すぐに受領の返信がきて、ほうと安堵の息をつく。
 午後になり、宮本さんは帰社するとすぐ、私の元にやってきた。

「ラストページのレイアウト、もしかして変えてくれた?」

 尋ねられ、こくりとうなずく。

「とっても見やすくてさ。提案もしやすかったし、助かった。俺だけじゃそこまでできなかったよ」

 宮本さんは「訂正だけで大変だったのに、ありがとう」と言って、自分のデスクに戻っていった。

 改めて肩を撫でおろし、抱えている案件作成のためにパソコンに向かう。すると、今度は部長に呼び出された。
 また何かミスを犯したらしい。度重なるミスへの指導かもしれない。
 
 せっかく撫でおろした肩をまた落とし、私は指定された会議室へと向かった。

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