幼馴染御曹司と十日間の恋人契約で愛を孕んだら彼の独占欲が全開になりました

　急速に冷たく速くなってきた胸を感じながらも、沙也は決めた。

　出なくては。

　なんとなく、ただの感覚だったが、取らなければ後悔するような気がした。

　そこでちょうど、降りる駅に電車が着くアナウンスが流れる。

　良かった、降りてから話せる。

　ほっとして、沙也は座席を立って出口へ向かいながら、思い切って応答ボタンをタップした。

「……も、もしもし？」

　電車を降りて、駅の改札ではない逆方向、ひとがいないほうへ向かいながら、沙也はどくどく騒ぐ心臓を抱えつつも、スマホに向かって声を出す。

『……ああ。出てくれたんだ。お久しぶり』

　数秒後、聞こえてきた声は、沙也が予感した通りだった。

　静かな声音は真悠のもの。

　お久しぶり、なんて言われたけれど、なんの用だろう。

　そもそも何故番号を知っているのか、何故非通知でかけてくるのか。

　わからないことばかりで、沙也はそれを聞こうとした。

「真悠さん？　なにか……」