再会した財閥御曹司は逃げ出しママと秘密のベビーを溺愛で手放さない~運命なんて信じないはずでした~
「あの・・・」

婦人の言葉を思い出し海を眺めている私に再び声がかかった。
振り返るとそこにいたのは若い男性。
片手には赤ワインの注がれたグラスを持ち、少し顔を赤らめている。

「何か?」
「よかったら一緒に飲みませんか?」
「いえ、私は結構です」

まさかこんな場所で声をかけられるとは思わなかった。
相手はだいぶ酔っているらしいし、このまま立ち去るのが得策だろうと私は歩き出す。

「待ってよ。少しくらい位付き合えよ」
態度の口調も急変し、離れて行こうとする私の腕を男性がつかんだ。

「やめてください」

いくら酔っぱらっていてもこれは許せない。
私は捕まれていない方の手で腕をはがし、そのまま男性を突き放す。

ドンッ。

もちろんそんなに強い力で押したわけではない。
でも酔っぱらっていたせいで、大きな音とともに男性が床に倒れ込んだ。

「何するんだっ」
ここぞとばかり怒鳴り声を上げる男性。

「あなたが腕をつかむからじゃないですか」
私にだって言い分はある。
しかし、

ビシャッ。
悔しまぎれに投げかけられた赤ワイン。

ワインは私の顔面を直撃し、ドレスを濡らしていく。

「あー、痛い痛い。こいつに突き飛ばされた―」
私が怯んだのを見て、男性の声が大きくなった。

当然のように周囲には人垣ができ始める。
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