秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
思っても見ない提案に困惑していると、山根さんがふいに私の腕をぐいっと引き寄せる。
「あの~……瀬名ちゃん、彼、悪い人じゃないならお願いすれば?」
「で、でもっ……!」
「バスと電車を乗り継いで帰っていたら、お迎えの時間もどんどん遅くなっちゃうし。まぁ、彼、元々のお知り合いなんでしょ? ちゃんとした方なんだし……大丈夫よ」
唯一、秋人の素性を知っている山根さんは、警戒しつつも私のために助言してくれる。
もちろん、秋人は信用できない人ではない。
問題は、車でふたりになることと、どんな質問が飛んでくるか分からないということだ。
しかし。
山根さんの言う通り、今から普段通りの道のりで迎えに行けば、結構な時間がかかってしまう。
それにあやめを迎えに行く前か後に、母子手帳や保険証を自宅に取りに行かねばならない。
ざっとかかりつけの小児科病院に到着するのは一時間半~二時間だろうか。
まず優先すべきは、あやめの体調。
でも……秋人の気持ちはどうなの? あやめを迎えに行く私を見るのは辛いとかないのかな……?
恐る恐る秋人に視線を戻すと、彼はいたって真剣な表情で私を見つめていた。
「結愛、俺に遠慮はいらない」
「秋人……」
秋人は私の気持ちが伝わったのか、はっきりと力強く言ってくれる。
そんな彼の姿に安心し、少しだけ肩の力が抜けた。
「うん……ありがとう。お願いします」