秘密の授かり出産だったのに、パパになった御曹司に溺愛し尽くされています
それから大急ぎで帰る支度をし、退勤時間を事務所のパソコンで打刻する。
その間に秋人は近くに停めていたコインパーキングから車を出し、私がちょうどお店の前に出たところに迎えに来てくれた。
「足元に気を付けて」
「ありがとう」
彼は運転席から出ると、自然な動作で助手席のドアを開けてくれる。
私がシートに腰を下ろすのを目で追うと、スニーカーが挟まらないかを確認し、静かにドアを閉めた。
秋人の所作は、いつも品がよく温かい情が伝わってくる。
付き合ったばかりのころは、そんなふうに男性に扱われた経験もなく戸惑ったものだ。
でもしばらくしてそれが彼の私への普通だと気付いたとき、愛おしい気持ちが大きくなった。
もちろん今も……。
「このまま高速を飛ばせば、結愛の自宅まで三十分はかからない」
「うん、本当に助かったよ。秋人は、仕事は大丈夫なの?」
「ああ、昨日出張から帰ったばかりで、休みをとった。時間はいくらでもある」
その後はどう続けたらいいか分からず、曖昧な返事をして口を閉じた。
心臓が落ち着かない。
秋人が昔から乗っているイギリスの高級車は、確実にグレードアップされていて、いったいいくらするのだろう。
それに先程から嗅覚を刺激する、この重厚な甘い香り。
愛用していたチェリームスクのオードパルファムは、未だに健在のようだ。
すべての神経に染み入ってきて、鮮明に過去を蘇らす罪な香り……。
「本当に自宅まででいいのか?」