悪役令嬢リセルの恋
 思わずほろりとするが、悪役をしっかりこなすためにも必死に耐え、にやりと笑った。

「これからは毎朝同じものを二食分持ってきて。あなたが食べてから、私もいただくことにする。そうすれば、私が安心できるもの」
「かしこまりました」

 満腹になったシンデレラは満足そうな様子を見せ、食器をもってさがっていく。
 軟膏のおかげでシンデレラの手のあかぎれはマシになっていて、香油で髪も艶が出始めていた。舞踏会は約一か月後にある。それまでには、原作通りの美しいシンデレラになれるはずだ。
 あとは手縫いのドレスを飾るものを手に入れてシンデレラに渡し、それを使用した素晴らしい完成品を引き裂けば完璧である。

 というわけで、リセルはこっそりと外出をする。以前来た商店通りでは市が立っていないもものたくさんのショップが建ち並んでおり、変わらないにぎやかさがある。
 ごみのない通りを見ると、あの日のことが思い出された。
 ──そういえば……彼のけがはよくなったかな。

『また、会いましょう』

 指先に落とされたキスの感覚と自分を見つめる青い瞳。声までよみがえってしまい、トクンと胸が鳴った。
 あんなことを言っていたけれど、どうやったら会えるというのか。名前もクロードとしかわからないのに。
 ──あ、こんなところにも御触れが貼ってあるのね。
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