悪役令嬢リセルの恋
【セドリック皇太子殿下の二十五歳を祝い、舞踏会を開催する。参加資格は十八~二十五歳の未婚男女。貴賤は問わない】

 帝国中に出された御触れ。当初の招待は貴族のみだったが、数日前に内容が変更されたのだ。参加資格が未婚の男女のみになり、貴賤問わずとなったのだ。

 変更されたのは、二十五歳になった皇太子の妃候補を見つけるためだろう。
 原作の通りだが、「卑しい平民を皇宮に入れるなんて」と、貴族たちが反発したのはいうまでもない。
 しかし、貴賤問わずでも盛装してダンスを踊れる平民はごくわずかだ。結局は貴族と同レベルの者しか参加できない。
 こんなふうに妃候補を見つけようとするのは、わが娘を妃にと企む貴族たちの勢力争いに対抗するためだろうか。

「まあ、どうあってもお妃は決まってるものね」

 皇太子がシンデレラに会ってひとめぼれをし、ガラスの靴を拾うのだ。

「おい、そこの女。待てよ」

 いきなり野太い声で声をかけられ、思わずカチンとする。

「女って、私のことかしら」

 リセルが立ち止まるとバラバラと寄ってきた男性たちに囲まれてしまった。
 十人ほどいる彼らの年齢層は幅広く、ニヤニヤしてリセルの体を舐めまわすように見ている。
 町のゴロツキたちだ。何をされるのかわからない。リセルはギロっとにらみ、声が震えないようにお腹に力を込めた。

「退いてちょうだい」

 毅然とした態度をとるも、彼らは引こうとしない。
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