悪役令嬢リセルの恋
 それどころか間を詰めてきた。

「俺たちはあんたに用があるんだよ」

 ひとりがリセルの手をつかもうと腕を伸ばしてくる。
 ──拉致するつもり!?

「触らないで!」

 リセルが叫んだそのとき、ダダッと駆け寄る音がし、男の腕は何者かにガシッとつかまれていた。

「貴様ら、なにをするつもりだ」

 落ち着いているけれど気迫のこもった声音。リセルと男たちの間に入った背中。見覚えのあるフード付きのローブ。
 ──クロード、なの……?

「この通りを張っていて正解だったな。こんなゴロツキどもが彼女を狙うとは……彼女に用があるなら、まず、俺が聞こう」

 リセルを守るように立ちはだかったその背中はとても大きくて、恐怖を安心に変えていく。

「ち、違うんだ」

「そうだ。俺たちは、その」
「彼女にお礼が言いたくて!」

 しどろもどろな声が出され、クロードの背中から漂っていた気迫が少し薄れた。リセルもきょとんとしながら、背中の向こうを覗き見る。

「お礼、だと?」
「はい。この間、青狼騎士団を動かしてくれたのは、そのお嬢さんなんで」
「俺のばあちゃんを助けてくれたのも、その娘さんなんだ」
「だから、お礼が言いたくて、また現れるのを待ってたんだ」

 冷や汗をかきペコペコしているので、リセルはクロードの陰から出て隣に立った。

「なんだ。それなら、そうといえばいいのよ」
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